代官山のビルの屋上にガラス張りの温室があり、自然を題材とした写真による作品展示が企画された。
花をカラーで、山の自然をモノクロームで撮り続けていた私は、
温室というガラス張りの展示空間に、同時にふたつの題材で作品展示が可能であるかを試みた。
日頃、インテリアやプロダクトの撮影が中心であるためか、自然界が創り出すものになぜか強く惹かれる。
日常生活の中に存在している、植物の組織が創り出す花のフォルムと華美な色彩に心を奪われ、
息をひそめて、そっと覗いてみると生命の息吹を感じるのである。
また、山に入ると四季を通して見せてくれる自然が創り出す光景に心が踊るのだ。
特別な自然現象や特異な自然の造形物に出会うまでもなく、
眼に写る光景のすべてに自然界の生きる力を感じて撮影してきた。
異なるふたつの作品をひとつのテーマにまとめることが難しく、
正面からはモノクロームで撮影した自然の光景の作品が見え、
反対側からはカラーで撮影した花の作品が見えるという展示構成を試みた。
作品はフレームに収めず、ハンギングによる展示を選択した。
花と自然の光景は、ガラス張りという全面に自然光が注ぐ環境のなかで、
心地よく風に揺らぎ、温室の空気と調和したのである。
景花というタイトルは、山で眼にした光景と花を掛け合わせた造語である。
林 雅之