Living Flowers

「歌い咲く」

林さんの撮った花
をなぞっていたら、
花びらの底にみつけた。


 茎の一本道を晴れやかに歩いて行った。
 ゆるやかな花のうなじを辿って、
 花弁の内側を滑り降りていくと、
 そこにはみどりの泉が在った。

 花びらの、やわらかな襲をかきわけて、
 触角のような雄薬を振ると
 黄色い花粉が舞いあがって、
 それは淡雪のように降った。


林さんの撮った花
の奥にひそみ、
沖から寄せる波音。


 泉のほとりから見上げたら、
 すっくと立った柱頭の先は、
 あおい空にじわっと光って、蜜が滲んでいるようだ。
 みどりいろの底は、ねむくなる。

 胚のふくらみにもたれて
 うとうとと
 なにかの音連れに目が覚めたら
 オーロラは歌っていた。


  雌薬のねもとは、地球のおさない記憶がたゆたう場所。
  ここから千もの色があふれ、千歳(せんざい)の音が立ち上がる。
  ひとつひとつの花の台(うてな)が、
  この色だったなんて。

生きているその花々の真ん中で奇蹟はいつも、
いつも咲(わら)っていて、
それは満ちて儚く、咲いて果て、
カラフルでマカブル、
ひたぶるに自由なのだ。


林さんの撮った花
にからまっていたら、
空だって飛べる気がした。
そう、蜜の力で、花粉を背負って。


塚田有一




TITLE
Living Flowers
CATEGORY
Self Initiated Project
OUT PUT
Exhibition
DATE
2012.05.11 - 05.28
VENUE
IDÉE SHOP Jiyugaoka
COOPERATION

IDÉE    塚田有一 (温室)    銀一株式会社 株式会社オノウエ印刷

櫻井事務所 若林 恵

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