オフタイムに都会の喧騒を避けるように山歩きに出かけます。
モノクロームのフィルムを詰めた二眼レフのカメラを首から下げながら、
山の中を歩いていると感情を揺さぶる様々な自然界が奏でる光景に出逢います。
それは日本アルプスなどの高峰に限らず、
関東近郊の低山でも四季折々に出逢うことができます。
私には、厳冬期に高峰を登攀する技術や
雪を纏った感動的な美しい秀峰を写真に収める術はありませんが
山を駆け上がる雲、風に踊る雲、樹林に差し込む太陽の光や、
その光を受けて逞しく生息する植物たち、
長い時間をかけて風雪雨が削り続けた岩の表層やフォルムなど、
都会では体感できない自然界の日々の営みに心が躍ります。
山歩きは決して楽な行為ではありませんが、
急登に喘いでいると、
いつしか無心になり山頂に立つ達成感とともに、
都会から背負ってきた疲弊した精神が解放されます。
山で過ごす時間を少しづつ重ねていくうちに、
山の中で日々繰り返されている自然界の日常のドラマに
素直にカメラを向けるようになりました。
そんな自然の中の光景に出会うために、
山を観に山を歩きに行くのです。
林 雅之